坂井 大輔Daisuke Sakai

執行役員

建築設計は1人では出来ない。
目線合わせと信頼関係がないとうまく行かない

−坂井さんは中途採用でプランテックグループに入社されていますが、どんな点に魅力を感じて入社を決めたのか、入社前に思い描いていた部分と入社後に実務に携わってみて異なった印象を感じた部分を教えてください。

私は元々アトリエ事務所に勤務していましたが、もう少し大きな規模の仕事に携わりたいと考え、アトリエでもなく組織でもないプランテックが目に留まり入社を決めました。当時Sony Cityのような大きなプロジェクトが進行していましたが、私のような中途入社の社員が多く、何より個性的な人たちの集まりという印象でした。学生時代から大江さんの事は知っていましたが、入社してみるとメディアで見る柔和なイメージとも違い、毎週張り詰めた雰囲気で大江さんとの所内打合せが行われていて、組織事務所と言うよりはまさにアトリエ事務所という感じでした。

−では、現在の坂井さんのミッションというのはどんなものなのでしょうか。

今年度から業務執行体制が変わり、プロジェクトベースでチームを組成して業務に臨む体制になりました。これまで自分のグループという枠がありましたが、これからはプロジェクトチームを適宜編成して、それぞれのチームを統括する役割になります。各プロジェクトを推進していくことが私のミッションですが、そのプロジェクトにアサインされたスタッフ達の個性を引き出して磨いていくことも大事だと考えています。それと私は、生前の大江さんと個別に打合せをすることが多かったのですが、自分たちのアイデアをぶつけたり、逆に思いもよらないアイデアをもらったりと、非常に刺激的で楽しいものでした。そこで得た知見や学びを伝えていくことも私のミッションだと考えています。

−その中でチームのマネジメント・育成する上で意識していることは何でしょうか。

基本的なことですが、プロジェクトはチームで取り組んでいますのでコミュニケーションは特に大事にしています。プロジェクトを統括する立場ですが、スタッフの輪の中に入り一緒に考えたり議論したりすることも多いですね。現場にも良く行きますよ。報告を聞くよりも自分の目で現場の状況を把握して、スタッフと一緒に行動し、彼らの考えを共有・理解するほうがいいと考えています。

−どのような視点を重視してコミュニケーションを取っているのでしょうか。

まずは、このプロジェクトの今回のテーマはここだよねと共通認識をもつことが大事だと考えています。デザイン重視なのか機能なのか。求められている課題は何か、それに対してのソリューションはどういうものか。クライアントの声を聞きながらプロジェクトで共通認識を持つことが一番重要で、チーム内でもそれを常に共有して進めることを心がけています。そこがズレると無駄な時間とコストをかけて何の成果・付加価値も出せなくなる。建築設計は1人では出来ないし、考えることも多く大変な作業の連続なんですよ。だから目線合わせと信頼関係がないとうまく行かないですね。

−なるほど、チーム内の目線合わせをすることが大事なんですね。

私の仕事の大部分はそこですね。明確な指示を出すこともあれば、こういう方法は?と方向性やイメージを刷り込んでいくこともあります。それを受けて図面やCGで検討してくれていますが、最終的に私が考えている方向とチーム内の共通認識をすり合わせながら進めています。「こっちの方がかっこいいよね」「こうした方がいいよね」とお互いディスカッションしながらフランクにやり取りできていますが、方向が違うときは「それは良くないです」と言ってくれる関係もあります。

−「良くないです」とスタッフから言われることもあるのですね。

そう言い合えるのがチームでやっている上で大事だと思います。その方が楽しく仕事も出来ますし、チームのメンバーが皆同じ目線にいなければ一緒に仕事はできないですから。あとは普段からナレッジ共有については心がけていて、参考物件を一緒に見に行ったり、社内のSNS等を活用して情報共有したりしていますね。同じ空間を体験したりお互い情報を共有したりすることで、共通の価値観を形成しやすくなります。そういったナレッジを共有できている部下が徐々に増えつつあるので、そこはチームとして一体感を感じます。

プランテックにはチャンスがいくらでもある。

−では、教育やスキルアップ面はいかがですか?スタッフのキャリア形成面でのアドバイスや、設計面で意識していることはあるのでしょうか。

期待役割を達成させるためにスタッフが相談できる距離にいるということもありますが、当然個々によりアドバイスの内容は違います。例えば、先日ひと段落したプロジェクトでは入社1年目・2年目のスタッフが多く当初は不安もありましたが、それぞれが自分の役割を果たしつつ個々のメンバーが大きく成長しました。客先打合せや役員プレゼンに早期から出席させ業務の一部を担わせることで、責任感の醸成とプロジェクトを通しての設計経験や技術力の向上が図れると考えています。

−スタッフを見ていてプランテックに入ったらどんなキャリアを描けるなと思いますか。

キャリア形成に関しては、比較的思い描いた通りになると思います。プランテックにはチャンスがいくらでもあり、プロジェクトへのアサインや部署への配置は個々が持つ能力に応じて行われます。ですので、本人のモチベーションや努力次第という点が多分にあると言えますね。

−続いてプロジェクトについてですが、これまで携わったプロジェクトは「オフィス」「研究所」が多いように感じますが、どちらも建物内で働くという点で共通点があると思います。クライアントとの坂井さん流の「歩み方」のようなものはありますか。

武田薬品工業の湘南研究所の設計プロジェクトに4年間常駐していましたので、その影響が大きいかもしれませんが、やはりプロジェクトを成功させるには、いかにクライアントを巻き込んで一緒に考えていくかということではないでしょうか。例えば湘南研究所のときは、約15~20の研究部門からそれぞれ部門長から中堅・若手までの方たちに出席してもらい、分科会や詳細なヒアリングを何度も行いました。研究総務の方が全体最適化を意識しながら取りまとめてくれましたが、細部は個々の調整があり関係者も多く大変でした。モランボン本社の時は「オフィス研究会」という分科会を立ち上げ、当時の若手社員の方でワーキンググループを組成して頂き、他社のオフィス見学や働き方のディスカッションを行ないました。

−クライアントを巻き込むのは理解できますが、役員の方ではなく、若手社員の方を集めたのですか。

設計したオフィスを今後一番使う方はこれから20〜30年働く今の若手社員でしょう。そういった方の意見も大事にしていくべきですから。オフィス研究会そのものもかなりカジュアルな会議で、たくさんの意見が生まれて面白かったですよ。クライアントとも良好な関係を作ることができましたね。

設計した空間がちゃんと生きて
いつまでもクライアントに使われていてほしい

−研究所でもオフィスでも同じ働くスペースとは言え、専門性の違う会社の建物を建てていかなければいけませんよね。業界や特殊性を調査し知識を得て業務にあたる中で、今後の課題などはありますか。

コロナ禍によって私たちの働き方や働く場の在り方は大きく変化しようとしています。竣工当時は明確なコンセプトを持って造られた建物や空間でも、このような社会環境や組織体制の変化で、うまく活用されなくなる事例もあると思います。このような変化にも対応できるフレキシブルな空間や機能を準備することの重要性も感じますし、今後の動向を見ながら新たなワークスペースを提案していく必要性を感じています。クライアントが求める付加価値を引き出せるような設計やコンサルティング、引渡し後のきめ細やかなフォロー体制を構築していきたいですね。やはり設計に携わる以上、建物や空間が活かされ続けないと私達の使命に関わってきますからね。

−最後にお聞きしますが、これまでのプロジェクトで一番印象的なものはありますか。

プランテックで十数年設計をしていますが、どれが一番印象的か?と聞かれても、どれも自分が担当者や責任者として携わったものですから、同じように思い入れがあり簡単には選べないですね。私は「あれは俺が考えたんだ」というタイプでもないですし、当時のチーム全員で完成させた仕事ですので、一つ一つのプロジェクトとその時のメンバーが紐付いて思い起こされます。このクライアントだったからこそ一緒にいいものが作れたなどもありますが、プロジェクトによって成功のものさしは違いますので一概には言えません。強いて選ぶとしたら、丸4年間携わって自分を成長させてくれた武田薬品工業の湘南研究所でしょうか。