南海ターミナルビル『保存・再生・先進性』

CONCEPT

南海ビルは、昭和7年に4代目の南海難波駅として建築家久野節により設計され建設された。大阪市の「都市大改造計画」により大拡幅された御堂筋の突当りに位置した北側外壁は、三連窓とリズミカルなアーチでデザインされ、アカンサス模様で裝飾されたコリント式柱頭で華麗さと力強さを演出していた。日本国内でも有数規模のテラコッタ装飾が施された文化的価値の高い建築物である。しかし、永い歴史の中で補修・改修が繰り返され無秩序な看板・装飾の設置や塗装が行われ無残な姿となり、経済的にも沈下傾向にあった難波の負のイメージの象徴となっていた。
今回の南海ビル北側外壁改修は、南海ターミナルビル再生計画の中でオリジナルの意匠を保存・再生し、変化のメッセージをこめることにより難波再興のシンボルと位置づけている。
改修は大きくオリジナルの保存、オリジナルの再生、未来性の挿入から成っている。オリジナルの保存として剥落の危険性のあった湿式タイルは、全て乾式工法に改修し、南海ビル北側外壁の象徴ともいるテラコッタは、健全な経年変化を風合いとして残すべく、最先端の技術を用いて最小限の補修を行った。オリジナルの再生として、過去に銅板にて改修され意匠が変わってしまった庇は、既存の躯体を流用しながらオリジナルの意匠を目指して改修を行った。未来性の挿入としては屋上塔屋のカーテンウォールと外壁に設けた2ヶ所のMPGカーテンウォールにより、先進性と変化のメッセージを表現している。

DATA

所在地:大阪府大阪市
階数:地上36階・地下3階・塔屋2階
構造:SRC造・S造・RC造
設計期間:2005.4-2006.8
施工期間:2007.3-2011.3
敷地面積:34,252.02m²
建築面積:33,508.26m²
延床面積:280,636.56m²

AWARD

2010年グッドデザイン賞
第55回鉄道建築協会賞
第52回BCS賞(特別賞)
2011年日本建築家協会優秀建築選
第21回BELCA賞(ベストリフォーム部門)
第32回大阪都市景観建築賞(大阪まちなみ賞)審査員特別賞